② 超図解の数学教材 誕生のきっかけ

超図解ズーミング数学開発者の筏井(右)、尾間(左)

中学校数学の「超図解教材」 誕生のきっかけ

− 超図解ズーミングの構想が生まれたきっかけは教えてください

筏井(いかだい) 以前米マイクロソフト社(日本法人)に勤務していた頃に、多くの人々を前にして新しいソフトウェアや技術についてプレゼンテーションする経験を積んできました。その時に次世代プレゼンテーションツールの「Prezi(プレジ)」に出会いました。

Preziで作るプレゼンはPowerPointの紙芝居のようなスライド形式ではなく、1枚のキャンバスに描いた絵のようなものです。全体像から、順番にズームや回転をして動画のようにフォーカスを切り替えながらプレゼンを進めます。このズームの動きそのものがプレゼンの流れと合致していて、文字やデータだけよりも直感的にメッセージを伝えることができます。

このPreziを使いこなすようになって「スライド形式のPowerPointよりもプレゼンが覚えやすい」ことを実感しました。自分のプレゼンの練習をしていた時、PowerPointでは例えば5枚目のスライド画面に何のグラフが載っているかを覚えるのにとても苦労しました。でもPreziだと、5つ目の画面の内容にくわえて、次に何が続くのかという全体の流れも含めて記憶するのが楽なんですよ。

私には小学校に通う子供がいるのですが、子供の勉強の面倒をみているうちにPreziが学習教材づくりにも活かせるのではないかと思うようになりました。これが超図解ズーミングのアイディアのきっかけですね。

尾間(おま) 筏井からこのアイディアを聞いたとき、Preziのズーム機能で全体を俯瞰したり、要素ごとにフォーカスしたりできる表現が、自分が受験勉強のときに定理や公式を覚えるために脳内でイメージしていたものと似ていると気づきました。

私のプロフィール欄で東大に現役合格したと書いてあるのですが、中学時代はそれほど優秀というわけではなく、高校受験の第一志望校は合否ギリギリのラインで先生に志望校を変えたほうがいいかもしれないと言われました。あの頃は、やみくもに勉強して暗記してもすぐ忘れてしまうことに悩んでいました。

田舎の生まれで近所に進学塾もなかったので、自分なりに工夫して問題を解くプロセスなどを脳内でビジュアル化する術をあみ出し、実践してみたら記憶しやすかったんですね。なので高校時代もその方法で勉強して少しずつ学力を伸ばしていきました。

− 2人の経験が、偶然にもズーミングの開発につながったのでしょうか?

筏井  そうですね。ズーミングのプロトタイプを尾間に見せたとき、目からウロコが落ちたと言って驚いてましたからね(笑)。勉強の得意な人が頭の中でイメージしていることが視覚的に表現できて、誰でも効率的で正しいアプローチで勉強できるのがズーミングの動画教材の魅力だと思います。一言でいえば、動く参考書です。

尾間  高校時代、クラスメートから何かの問題の解き方を教えてほしいと言われて。「あぁこれはこんな感じでふつうに解けば答えが出るよ」みたいなことを言ったら、場が凍りついたような沈黙に包まれたのを覚えています。

筏井 出た!勉強が得意な人の悪いクセ(笑)。その「ふつう」が分からないから質問しているのに。

尾間  その頃の自分には、頭の中のイメージを伝える表現手段がなかったんですよ…。こういう苦い経験があるからこそ、Preziを活用した学習教材には大きな可能性を感じられるんです。

数学は正しい解き方を身につければ苦手を克服できる

− どうして中学校の数学をズーミングで解説しているのですか?

尾間 数学や算数は子供の好きな科目、苦手な科目の両方で第1位になっている科目です。つまり得意な人と苦手な人に極端に分かれていると言えるのではないかと思います。なぜ数学が苦手になってしまうのかというと、数学ってどこかでつまずくとその後で習う範囲も理解できなくなるんですね。たとえば方程式が分からないのに、二次方程式、連立方程式を理解することはできません。小学校で習う分数の計算とか割合のことが分かっていないと確率の内容を理解することはできません。

数学の得意/不得意は、いかに正しい考え方・解き方を身につけるかに依ると私は思っています。しかし子供たちは必ずしも分かりやすい説明をしてくれる大人に出会えるとは限らない。そして文系か理系かの進路選択で「数学が苦手だから」という理由で文系に行ってしまうという、ネガティブな理由で決断をしてしまう人がたくさんいます。こういう現状がすごく残念で、わかりやすい数学の解説を全国の子供たちに届けたいと思うようになりました。

筏井 数学や物理、化学は日本のお家芸と言われたのがまるでウソのように数学嫌いが溢れかえる国になりました。私はこのままで良いとはどうしても思えません。数学の正しい学び方を知らないだけで、数学の楽しさや素晴らしさを知ることもできず、それがやがて生み出すかもしれない価値や利益をも無駄にしてしまうからです。

− 数学が苦手な人が多いことは、日本の社会にとっても不利なのでしょうか?

筏井  世界を変えるようなテクノロジーを生み出すのは、探究心と好奇心、そして情熱です。アップルやグーグル、フェイスブック、アマゾンやテスラなど世界を変えるようなプロダクトやサービスはいつも新しい発想、技術から生まれています。

これらの技術は確かに二次方程式の解の公式から生まれたわけではありません。むしろ、もっとハイレベルな高等数学や応用科学によって生み出されたものです。でも根本にあるのは、数学的な思考や、科学に対する可能性や自分の好奇心を信じた人たちの想いと情熱であることは間違いありません。

基礎教育の時点で、数学が嫌いだからという理由で、将来の発明につながるサイエンスに対する好奇心、探究心の芽をつむような選択を子供たちにさせる事は、10年、20年先の未来への可能性を自分の手でせばめてしまうものです。中学レベルの数学は、誰でも理解できている状態を実現できる指導や教材がなされることが理想的です。

− 中学の数学が得意だと、やはり高校受験にも有利ですか?

尾間 はい。さきほども言ったとおり、数学は小学校の算数から正しく理解できていないと必ずどこかで綻びが出てくる科目です。ですから苦手を克服して基礎を確立するための時間が他の科目よりかかるし、高校入試では色々な分野が融合した応用問題が出てくるので、定期テストの問題は解けるのに入試問題は解けないという悩みを抱える受験生も多くいます。

勉強が大変なぶん、得点差がひらきやすい科目だと思います。とくに入試問題は正しい解き方がわかってさえいれば正解できる類のものです。その考え方を身につけるうえで、ズーミングの超図解は受験生の皆さんにとって価値ある教材となってくれるはずです。

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